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急勾配が続く六丁峠（京都市右京区嵯峨鳥居本深谷町）。京都右京の方にある六丁峠はそのまま進むと亀岡の方に抜けられる峠。凄まじい急勾配だから自転車ではきつい。が走りごたえのある道である。
六丁峠
六丁峠の道筋は、ただ勾配がきついというだけではなく、京都市街地から少し離れただけで一気に山深さを感じられる点に魅力があります。嵯峨鳥居本の町並みを抜けて峠の入口に差し掛かると、気配がふっと変わり、観光地としての華やかさよりも、古くから人が行き来した山道特有の静けさが濃くなっていきます。季節によっては鳥の声と風の音しか聞こえず、舗装された道路でありながら、昔の街道を思わせる雰囲気が残っています。

急な上り坂は続きますが、所々で視界が開け、深い谷と山の重なりが一望できます。特に朝方や夕方は光が斜めから差し込み、木々の陰影がくっきりと浮かび上がり、京都市中心部では味わえない空気の濃さを感じさせます。勾配のきつさに足が止まりそうになりながらも、この風景の変化が少しずつ先へ進む力をくれます。

峠を越えて亀岡方面に下りていくと、景色は再び大きく変わり、山の中の静寂から一転して視界が開け、盆地ならではの穏やかな土地が広がります。道路の雰囲気も京都側とは異なり、どこか柔らかさを感じるのは、日当たりの違いや地形的な余裕からくるものなのかもしれません。京都側の峠道が“挑む道”だとすれば、亀岡側は“抜けていく道”という印象で、走っていると自然と気分もゆるんでいきます。

自転車で走る人にとって六丁峠は間違いなくタフなコースですが、負荷が高いぶんだけ達成感が大きく、頂上にたどり着いた瞬間の解放感は格別です。ロードバイクで挑む人の多くが「きついのにまた来たくなる」と口にする理由は、まさにこの感覚にあります。車やバイクでも気持ちよく走れる道ですが、身体でその勾配と空気の冷たさを感じながら進む自転車だからこそ、この峠の魅力がより濃く伝わるのだと思います。

観光地として大々的に紹介されることはあまりありませんが、京都の自然の奥行きと地形の面白さを存分に味わえる場所であり、短い距離の中に“峠道の魅力”が凝縮されています。市街地から近いのに、走り出して数分で山の空気に包まれるこの感覚は六丁峠ならではで、思い立った時にふらりと向かうだけで、日常のざわつきから切り離された静かな時間を過ごすことができます。

六丁峠は決して優しい道ではありませんが、その険しさが旅の印象を強く刻み、何度訪れても新しい表情を見せてくれます。京都のなかでも特に“走る楽しさ”を感じられる峠であり、道そのものの魅力が目的地になる数少ない場所だといえます。

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